「創る」と「観る」の魂がせめぎあう空間 - 渡邊恭成 展覧会「王に告ぐ」-

2017.04.20  展覧会 渡邊恭成

白い箱のギャラリーじゃ違うんです

「ここしかない!」
渡邊恭成は、蔵・茶室・和室の3部屋を展示会場とする当ギャラリーの空間があったから今回の展覧会を考えたという。
若い頃は作品を置く空間にはさほど頓着しなかったという渡邊。「アトリエで作品が完成した瞬間に世界中がびっくりしてくれないかな、なんて思っていた。」と笑う。
しかし今は、どこに置いても価値はあると感じると同時に、置く場所、その空間と作品の相乗作用をも考えるようになった。
そんな渡邊にとって、この空間は「ここしかない!」と思える場所だったのだ。
今回、渡邊は蔵・茶室・和室というそれぞれの空間に置くことを想定した作品を制作している。

金属からミクストメディアへ

渡邊は過去に3度当ギャラリーで展覧会を行っているが、今まではすべて金属を使った作品だった。
しかし今回は金属は使わない。石膏、木材、紙、プラスティックなどを用いるミクストメディアである。
そのきっかけとなったのは、ドイツでの経験だ。彼が最初にドイツを訪れたのは2007年の初の海外コンペ参加のためだった。
そしてその後は毎年のようにドイツに滞在し、数多くの作家の作品に直に触れてきた。
例えばある作家の鉄と綿を組み合わせた作品に出合った時には「すごいとかより、こういうの俺にはとても無理、と感じたのがとても面白かった。」という経験も。

そもそも彼にとっては、「金属はとにかくカッコイイですよ。ほんとうに大好きな素材なんです。」という反面、ファイバーなど柔弱なテイストの素材はあまり好みではなかったのだという。
しかし、ドイツで様々な作品を見て、感じて「それまで金属じゃないとダメだったのが、金属であってもなくてもいけると感じるようになったかも。」また「変わっていくことの大切さみたいなものもあるのかもしれない?」という感覚もでてきたのだとか。
そこから金属以外のものも手がけるようになったが、なかなか思い通りにはいかなかったという。「それまでやってきた金工ではどんなものでも、どこまでどうすればいいのか、どこが最終形なのかわかる、そのわかりやすさが自分にとって気持が良いものだった。ところが金属以外の素材だとそれがよくわからなくて…苦労しました。」
そういうこともあり、ミクストメディアの作品は2年程度も準備期間を要し今回の展覧会は満を持しての開催となる。

 

舞台となる3つの空間

渡邊が自身にとって、初めてのミクストメディアの作品のみで構成する個展を行いたいと思った決め手は、冒頭に書いた通り当ギャラリーの空間である。
まずは、蔵。「広くない。そして見る者が包まれる感覚がある。」
「例えば風景を写真に写しても、それは目で見ている風景ではない。目ではもっと広く、たくさんのものを見て、それを風景として認識しています。でも蔵という限られたスペースでは、全てが目に入る。つまり目に入るものが全てで、それが伝わってくる。そこがすごい魅力なんです。」

蔵には大きな作品が置かれる予定だ。蔵に入った真正面の壁にそれはあって、「空間の大きさに比して作品はとても大きい。いきなり目に入ってしまう。対峙する。たぶん、引き返せません(笑)。この蔵がメインの空間になります。」

おそらく、蔵の扉をくぐった瞬間に目が捕らわれて足が止まるか、ぐいぐい引きつけられていくのか?
最初の衝撃の後に近づいてディテールを鑑賞すれば、そこでまた見る者の中に何かが生まれてきそうだ。

そして茶室。「ここは比較的開かれている空間としてとらえています。」
ここには壁掛けのオブジェが配置される。
「幼い子どもの顔です。赤ん坊ですかね。そのオブジェです。」「そして、顔というのは誰がみても顔なんです。なにで作ってあってもそれが石膏や金属の塊だとは感じない。顔として感じる。」その言葉どおり、観覧者はひとりひとり違う子どもの顔を見る。どの子にも共通していることも見る。
「2年の間にやっとやっと作りたい表情ができるようになってきたかも。作っている時にその子の顔がわかるようになってきたというか…。この子はおとなしい子だから、とかね。」

3つめの空間は和室。「ステップを上がってここに入ることで、周りの空気が変わるということが重要。」
その空気感の中に置かれるのは<箱>だという。ダークな色調のものになるというが、これもまた大きく、その存在感は圧倒的になりそうだ。もちろん傍に寄って鑑賞して欲しい。
例えば箱の表面には彼の作品によく登場する波模様が。
「特に波模様を意識しているわけではないのです。ただこれは自分の中に入っている模様というか、自然にでてくる無作為の模様。下書きがなくてもいくらでも無限に描いていけるしその時の気分で変化も自由につけられる。」それを彼は“手癖”と表現した。和室の中に渡邊の無作為の“手癖”が連綿と息づくのかもしれない。

 

そして「王に告ぐ」

「人にはそれぞれデザイン力がある。それは感性という言葉にも置き換えられるだろう。」と渡邊はいう。
彼の作品を観た時、受け取るものやその強さは人によって異なるはずだ。それを渡邊は「せめぎ合い」と表現した。
渡邊の作品が空間の中で通奏低音的に響いているとすれば、それが観る人の中でどのように共鳴するかということも「せめぎあい」かもしれない。
例えば、王とは何者なのか? その答えは渡邊の作品をこの空間で観た人の中にあるのかもしれない。

「伝わる」ということについて、渡邊は音楽というキーワードで説明してくれた。
「音楽の伝わり方、力。例えばベートーベンなんて全く知らなくても、ジャジャジャジャーンってフレーズを聴いただけで、ぞくぞくっとくる子どもはいると思う。そしてベートーベンを研究している人、音楽をやっている人も同じジャジャジャジャーンでぞくっとくる。これは感覚にストレートに伝わるということですよね。」
渡邊の作品も、普段アートに縁がなくても、現代芸術のムーブメントや作家についてなど知識をもたなくても、観る人に響く。

そして今回の「王に告ぐ」。
「とても感じる、強く伝わってくる、でもそれは言葉にすぐ置き換えられるものではない、そういう感じだと嬉しい。」
渡邊が、もしかすると自分の今までの作品全部との勝負になるかもしれないという世界がもうすぐスタートする。

 

 

– 渡邊恭成 展覧会「王に告ぐ」-

展覧会期間

2017年4月29日(土・祝)~5月14日(日) 各日 午前10時~午後6時
会期中休み無し

作家在廊予定日

4月29日(土・祝)
4月30日(日)
5月6日(土)
5月7日(日)
5月13日(土)
5月14日(日)

会期中のイベント

-レセプション

2017年4月29日(土・祝) 午後6時~午後8時
作家を囲み、ささやかなパーティーを行います。

-トークイベント

2017年5月6日(土) 午後4時から (1時間30分ほど)
トーク内容:作家  渡邊恭成自身による作品解説や、金属を離れて今回初となる新たなアプローチで臨んだ本展覧会等について。

展覧会会場

清課堂
〒604-0932 京都市中京区寺町二条下ル
店舗案内

 

展覧会詳細・問い合わせ先

Email: gallery@seikado.jp  担当:仲野