本田ゆうすけ個展 Sing a Moment

2012.10.24  展覧会 本田ゆうすけ

厳しかった今年の夏の暑さがようやくその姿を潜めるようになりました。もうすぐ、秋。紅葉の美しさに惹かれて、多くの観光客の方が京都に来られる季節です。

このたび清課堂ギャラリーにおいて『本田ゆうすけ個展~Sing a Moment』を開催いたします。当ギャラリーに関わった多くの作家とのご縁で本田氏とつながり、今秋に満を持しての開催となりました。

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仙台にアトリエを持つ同氏にとって、西日本では初めての個展。また当ギャラリーにとりましても金工作家による個展は2010年冬以来となります。同展では本田氏が中心に制作されておられるモビール(動く彫刻)を数多く展示いたします。空気の流れに身を任せて動くこれらモビールの軽やかさは、金属工芸のさらなる魅力が詰まっています。多くの方のご来場を心よりおまちしております。
清課堂七代当主 山中源兵衛


モビールをご存知ですか?様々な形を組み合わせて、天秤のようにバランスを調整したもので、「動く彫刻」とも言われています。一般的には天井から糸で吊り下げるものが多く、僅かな空気の流れによって揺れたり回ったり、デザインとともにその動きは私たちの心を和ませてくれます。

歴史を辿ると1930年頃にアメリカ人彫刻家のアレクサンダー・カルダーが創始した現代美術の様式です。以来、欧米諸国なかでも北欧では古くから一般家庭に室内調度品として愛され続けています。我が国においても北欧デザインの人気に伴い、街のインテリアショップなどでよく見かけるようになりました。近年では、モビールならではの自然な動きが乳児の目の発達を促進するという観点から、知育玩具として人気が高まっています。

モビールの多くが紙や木など軽量な素材であることに対し、本田ゆうすけ氏の作品はステンレスを中心として、そのほとんどが金属で制作されています。重く冷たい印象を与えることが多い金属工芸において、軽やかで柔らかな動きが特徴であるモビールの制作は、金工の更なる可能性を秘めています。

同氏のモビールの特徴は大きく二つ。一つはジュエリー制作も行う彼ならでは巧みな「色遣い」です。金属ならではの風合いや質感を見極め、様々な技法によって作り出された色合いは優しく落ち着いていて、近づいて確認しなければ金属と分からないほどとても温かみがあります。

もう一つは、モビールの醍醐味と言える「動き」です。個々の形がそれぞれの働きをすることによって、モビール本来の姿が現れます。空気の流れのままに身を任せたとき、ゆっくりと回るものと小刻みに揺れるもの、光を反射するものと影を落とすもの。金属の重みと特性を活かした小さな動きと大きな動きが重なり合い、それらが一堂に合わさることによって、ゆったりとした「時間(とき)」を生み出すのです。 彼の作品が空間に描く情景は、記憶の中にある穏やかな日常の営みにも見えます。例えば、きらきらと輝く川の水面。例えば、ふわふわと舞い降りる雪。自然の移り変わりが見せる一瞬一瞬の輝きは、温かく優しい気持ちを与え、ずっと眺めていたくなる美しさです。

時計が刻む一定の間隔としての「時間」ではなく、自分だけに流れる営みとしての「時間」。本田氏のモビールは、毎日の生活の中で思わず足を止めて見入ってしまうような情景を、表現しています。風によって静かに動き出し、次第に動きを大きくし、やがて小さくなる。それは時間の移ろいを表す一方で、時間を忘れさせてくれることでしょう。

本田ゆうすけ|金属工芸作家 略歴

1982 宮城県生まれ
2002 宮城県石巻高等学校卒業
2003 東北芸術工科大学 芸術学部美術科工芸コース入学
2004 金属工芸コースを専攻  金子透助教授 安部定助教授に師事
2006 東北芸術工科大学 工芸コース卒業
2007 東北芸術工科大学 金属工芸研究生入学  小林泰彦教授 金子透准教授 小林秀幹先生に師事
2008 同大学 研究生 終了 同大学 金属工芸 アシスタント
2010 宮城 アトリエ POPPOを構え 制作活動

<受賞歴>
2004 アート・ミーツ・アーキテクチャーコンペティション「優秀賞」授賞 主催
アーバネットコーポレーション (東京三軒茶屋)
2009 第27 回 朝日現代クラフト展「優秀賞」受賞
主催 朝日新聞社(阪急うめだ本店/大阪)
2010 第36 回 東北現代工芸美術展 奨励賞
主催 河北新報社(仙台メディアテーク)

<グループ展>
2009 本田ゆうすけ個展(ギャラリーくろすろーど/仙台)
他、グループ展多数

(2012年現在)

 


Yusuke Honda Exhibition ~ Sing a Moment

期間
平成24 年11月13日(火)~ 11月25 日(日)
午前10 時~午後6 時
※18日(日)、23日(金・祝)、25日(日)は開廊します。

※作家在廊日 13日(火)~18日(日)、22日(木)~25日(日:最終日)

レセプションパーティー 17日(土)18 時より
※ご入場の際は招待状の提示をお願いします。
(1枚の招待状でご友人4名様までご一緒できます)

場所
清課堂ギャラリー
〒604-0932 京都市中京区寺町通二条下ル
Tel:075-231-3661