小山泰之個展「REPEATING」ご報告

2013.06.01  小山泰之 展覧会 展覧会レビュー

小山泰之個展「REPEATING」を平成25年4月26日(火)~5月11日(土)に開催いたしました。

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小山氏は、1979年宮城県生まれ。東北芸術工科大学に在学中、アルミを電解し漆で仕上げる独自の技法 “アルマイト染色漆仕上げ”を確立されました。こちらをベースにしたテーブルウェアやジュエリーを製作し、国内での個展や海外のアートフェア等へ出品し作品を発表。近年は、アルミフォイルを手作業で圧縮したシリーズを展開されています。二回目となる清課堂ギャラリーでの展覧会も、このシリーズから「制作という行為とその工程」に焦点を絞り込んだものとなりました。
(写真は、京都新聞記事紙面より)

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展示された数多くの銀色の小さなボールはすべて、一般的な家庭用品であるアルミフォイルを20センチ四方にカットしたものが素材となっています。これを手で一つ一つ丸めていく。それをただただ繰り返すことにより、ボールはやや小さくなりながら輝きを帯びてくるのです。単純な作業に見えますが、ちょっとした力の具合やタイミングがずれることによって、ひびや割れが生じます。これまでに数えきれないほど作ってこられた小山氏でも、このボールが完成品となる確率は100%ではないとのこと。

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蔵のスペースには、完成した艶やかなアルミボールが縦20個×横20個、合計400個が整然と貼り付けられたパネルを展示しました。パネルは目が覚めるほどの色鮮やかなものを縦3×横3の全9色。すべてを一枚の平面にならべたところ、とても強いインパクトとメッセージを感じられた方も多かったように思います。この作品の前で来場者の多くの方々が意見を交わし合っておられたのが印象的です。

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和室には1つのボールができるまでの過程にスポットを当てました。同じ素材で同じ手法を取っているにもかかわらず、ボールの質感や大きさが行程の中で微妙に異なっていることがよくわかります。さらに小山氏自身が作っている動画を見た来場者はその作業量を想像していました。

小山氏は作品の展示はもちろんのこと、案内状のデザインや制作工程の動画も自らディレクションされました。スペースや間合いの取り方がなんとも絶妙であると同時に、ご自身の世界観を表現する空間やツールに1ミリの誤差も許さない印象がありました。その真摯な姿勢は、モノや情報が溢れる現代社会を辛辣に批評し、時代を超えた美しさを探求する「工芸の真理」に迫るものがあります。

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どこでも手に入る身近な素材。同じ行為の反復。極限に近いシンプルなモノとコトから生まれる作品に込められた小山氏の思いは、ご来場いただいた多くの方に伝わったように感じています。「表面的ではなく、モノの本質をみてもらいたい」という目的を果たした彼が、次なるステップをどのように踏み出すのか目を離せません。

 

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レセプションパーティはもちろんのこと、その前後にも多くの方にご来場いただき、好評のうちに無事終了いたしました。ここにご報告申し上げます。

清課堂 七代当主 山中源兵衛