本田ゆうすけ個展「sing a moment」ご報告

2012.12.15  展覧会 展覧会レビュー 本田ゆうすけ

本田ゆうすけ個展「sing a moment」を平成24年11月13日(火)~25日(日)に開催いたしました。

本田氏は、東北芸術工科大学にて金属工芸を専攻。教え子として、また助手として師事された金子透(かねこ・とおる)准教授は、2008年秋に清課堂ギャラリーにて作品展を開かれており、そのご縁もあって、本田氏は卒業制作の時から注目していた作家の一人でした。

学生時代から「空間演出」に興味を持ち数々のオブジェやクラフトを制作されていましたが、アトリエを仙台に構えられる3年前程からモビール(動くオブジェ)をメインとして活動。その後、地元仙台での展示をお見かけしたことがきっかけで、西日本で初めてとなる個展開催をご提案した次第です。

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モビールの多くが紙や木など軽量な素材であることに対し、彼の作品は銅やステンレスを主にそのほとんどを金属素材で制作。ステンレス軸のたわみ、揺れ、動きを巧みに活かし、金属そのものの重量感を感じさせない軽やかさと、その素材のもともと持つ重みを計算したゆったりとした動きが魅力です。

彼のモービルは屋根などから吊り下げるタイプとテーブルなどに設置する卓上タイプがあります。個展のタイトルにもなっている作品「sing a moment」は卓上タイプのオブジェです。銀色をしたステンレスの支柱の先に付けられた小さな円盤が、ほんのわずかな動きにも反応して揺れます。円盤には鮮やかな赤や煌めくゴールド、錆びた風合いの緑青など様々な色があり、それらと一堂に集めた和室はなかなか楽しい空間となりました。

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店舗からギャラリーへと抜ける通路や茶室には吊り下げタイプの「風花」を設置。葉の形を模したパーツが風に反応してゆっくりと回転します。比較的風が良く通るこの場所でそのシンプルな動きを見せるモビールは、来場者の足を必ず止めていました。

一番奥の蔵には、「sing a moment」や「風花」とは一線を画した作品を一堂に展示しました。彼曰く「空の夢を形にした」モビールたちは動物や飛行船など親しみやすいものがモチーフとなっており、物語の中に迷い込んだような空間になりました。

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彼のモビールは、まるでキラキラと輝く川の水面やヒラヒラと舞い落ちる一片の雪のよう。ずっと眺めていたくなるような自然の移り変わりが見せる一瞬の輝きを表現しています。それだからこそ、今後はそのパーツの色合いに加え、肌合いや質感の違いなどを出せると、より一層作品の幅も出来るように思います。会期中に30歳の誕生日を迎えた本田氏がこの展覧会を経て、何かしらの軸ができ、これから磨かれ、洗練されていくことが楽しみです。

会期中のほとんどを本田氏自身が在廊されたこともあり、好評のうちに無事終了いたしました。ここにご報告申し上げます。

<展覧会詳細はこちら>
https://www.seikado.jp/3330

七代目 山中源兵衛