植田千香子 金工展 Chikako Ueda Metalworks

2010.05.11  展覧会 植田千香子

植田千香子(うえだちかこ)金工展

京都を代表する鍛金工房「参稔工房」に生まれ育ち、立命館大学在学中より金属に触れ始めた彼女は、卒業後本格的に父植田参稔のもとで伝統的な鎚起を学びました。

伝統的な技法の継承に意欲を見せる中、生活の中での工芸のありかた、活かし方にも挑んでおられます。最近では、器に刻む紋様にグラフッィクデザインを取り入れるなどあたらしい試みもされています。金工を始めて今年で10年、今回はその節目になる初の個展となります。 この個展では、花器、香炉、装身具、ぐい呑みなど、大小およそ40点を一堂に展示ました。

日本工芸会に所属、日本伝統工芸展に毎年応募していることもあり、全体的にその色が強く作品に出ている展覧会でした。もちろん、簪(かんざし)や帯留めといった小品も数多く製作はされているものの、やはりどことなく「伝統工芸」の枠に納まったものが多かったように思います。

デザインのモチーフとなるものは動植物が主で、女性ならではのあたたかく柔らかい線が感じられました。とくに来場者の目を引いたものは、金魚、兎などもともと可愛らしい愛玩小動物を取り入れたもの。自分が身につけたいもの、欲しいものといった観点から作られている作品に注目が集まっていたと思います。

一方で、作品の作り込み技術については少し「粗さ」が目につきました。技術力向上や丁寧さの追求が課題だと考えます。今後の成長に期待する作家でした。

 

<植田千香子 略年譜>

1981 京都市に生まれる
2003 立命館大学卒業後父植田参稔に師事、鍛金を学ぶ
第32回日本伝統工芸近畿展に初入選(以後入選)
京都府陝西省(せんせいしょう)交流芸術展に出品
2004 京都府若手職人イタリア派遣事業に参加
2005 第52回日本伝統工芸展に初入選
2006 パナソニックわくわく体験ディスカバリー 講師
2007 京都美術工芸新鋭選抜展出品
2008 第37回日本伝統工芸近畿展「大阪府教育委員会賞」受賞
2009 第23回日本煎茶工芸展「日本煎茶工芸協会賞」受賞
現在     日本工芸会 準会員

(2010年現在)

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植田千香子 金工展 案内状 今回初の個展となる彼女だが、それだけではない人生のターンニングポイントとなる要素があったかもしれない。展覧会の数ヶ月前に結婚、伴侶を得たわけだが、グラフィックデザイナーであり絵描きでもあるご主人を創作活動におけるパートナーとして歩み始めた。 新作の香合には「林檎の木」がモチーフとして象嵌されていた。このデザインはご主人がデザインされたものだそう。今回の展覧会では印刷物の準備に始まり会場設営に至るまで、展覧会開催そのものをご主人の協力の下行った。

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純銀香炉「波ニ兎」 手のひらに乗るほどの、小ぶりの香炉。直径およそ9センチ。鍛造、純銀製。 各種新作の香炉が用意されていた中で、唯一清課堂側からオーダーして制作いただいた作品。茶人が好む、紫・ピンク色がかったタンパンイブシ技法を用いて着色されている。