ものづくりにおける「型」

2006.05.12  コラム 清課堂の日々

「これ、型で出来てるんですか?」と聞かれるお客様が沢山いらっしゃいます。型は、空手道の型、血液型などというように、それのもつ構成情報です。

型

弊堂の仕事にたとえば、融解した金属を成形する鋳造法においては、鋳型(いがた)が必要になります。これは実体のカタチを生み出すのに必要な、形状の情報です。型の種類にも多々あり、中でも緻密で精巧・複雑な工芸品に用いられるような蝋型(ろうがた)は、一品を生み出すために「蝋」で原形を作り、それを土で覆った一度(一体)限りの型を作ります。鋳造とは、実物を生み出すための虚の部分を製作、すなわち「型作り」をすることが作業の主になります。

量産工業製品に囲まれていると、全てのものは型から出来ている、型があると同じものが複数簡単に出来る、と信じ込んでしまいます。

前述の「型で出来てるんですか?」の言葉は「タイヤキを作るかのように、同じものが沢山出来ている代物か?」の問いかけであって、その意味に落胆し本当に悲しくなります。金属工芸品の製作には「型」があり、その「型」を設計し「型」を成形します。「型」によって出来上がった作品は量産品というわけではございません。