観光都市パリ 視察レポート

2009.02.23  コラム 展覧会 展覧会レビュー

国際観光都市パリを見学して

フランス、パリにて開催された『Maison & objet 2009 inParis(メゾン・エ・オブジェ)』のご報告をさせていただきましたが、今回はその開催会場であった「パリ」についての印象を書き記しておきます。

 

前にも書いたように、そもそもフランスやパリには憧れをもっていました。普段の生活の中でも意識をしていた「場」でありましたので、飛行機が着陸した瞬間私の感覚が探究心で解放され、空港ロビーの臭いや耳に飛び込んで来るノイズ、言語、視覚に入るデザインなど全てが心地良く入り込んできました。

『メゾン・エ・オブジェ』に出展はしておりましたが、それに全ての時間を当てていたわけではなく、パリの街そのものを肌で感じ、楽しむ時間もありました。その時間は、個人的には少年の様にワクワクと心躍らせるものでもありましたが、同じく歴史都市でもある京都の街中にて生活し、街づくりの一端を担う一人の事業主としては『国際観光都市パリ』というものが何であるのか視察をすることも重要な意味もありました。


私が日本人であったせいか、初めて降り立ったパリで目にしたものに日本の影響が色濃く出ているものが多くありました。これはまさに、一大『日本ブーム』といった様子でした。日本アニメ・マンガの人気は本屋を見ればすぐ判りますし、ビストロのソファの柄は日本の古典柄であったり、日本料理(寿司やラーメンなど)を出すお店が軒並み集まっている区画もあれば、メトロに乗ればキティーちゃんの携帯ストラップを付けた女子高生がいたりと、町中で日本のものを目にしました。ただし、ブームであるからこそですが、表面的な要素を日本風として模倣しているだけのものも沢山あり、疑問も感じるモノも多々ありました。

そのような心配を払拭する「場」との出会いもありました。パリにある日本茶専門店『寿月堂(じゅげつどう)』では、地下のワイン倉庫を改装したギャラリーにて「お弁当箱というテーマの展覧会」が開催されていました。そこでは定期的にお茶会も催されているとのこと。芯の通った日本の精神性を「茶」という文化を通して伝えておられるようで、そのスタイルには共感する部分が多くありました。場所は違えども、弊堂が目指している「視界」が確かなものであると実感しております。

「寿月堂パリ」さんのウェブサイトはこちら
https://www.jugetsudo.fr/

さて、改めて街の細部に目を凝らすと、それは正直美しいとは言えません。道には、排泄物、ゴミ、たばこの吸い殻などがどこかしと散乱。あらゆるところにスプレーを使った落書きがあります。これは、自分の描いていたパリも表層であったと感じたのですが、同時にそのことは生々しい生きた街の姿を目にした瞬間でもありました。


芸術や文化が集まる都市「パリ」という例えは古いのかも知れませんが、日本でいう芸術家や文化人が集まっているということではなく、表面的に美しいということだけでもなく、そこに暮らしている人々からそのような心意気を感じた気がします。ビストロのギャルソンがワインと食事のマッチィングや素晴らしさを語っている様からは奥深い「もてなし」を感じました。

パリの人たちは、兎に角お肉とポテトが好きなようです。毎食、山のように盛られたポテトフライにお腹一杯。

「パリ」はコスモポリタンという言葉に置き換えられることがあります。要は他民族が集まり、多くの思想や文化が入り交じった国際都市ということですが、そのような受け皿がパリにはあるのだと実感しています。
ヨーロッパの歴史や文化をより深く勉強したことはありませんが、スペイン、イタリア、フランス、イギリス、ドイツなどの主要諸国だけでなく、周辺の様々な国や民族にはアイデンティティと言った「誇り、意志、精神性」を感じることがあります。ヨーロッパ大陸が陸続きであるということがそうさせているのかも知れませんが、そんなアイデンティティを持った素敵な人々が集まる「場」のひとつとして「パリ」が美しく、力強く存在しているのでしょう。

パリ市内から北へ郊外鉄道にのって十分ほどのところに、ジプシーの村が見えてきます。トレーラーハウスが立ち並び、周辺にはゴミの山、山、山。都市部であるにもかかわらず、ゴミの中で暮らす人たちに衝撃を受けました。