

昔から作り続けているもの・特別受注品製作のほかに、傷んだ金工品の修理も私どもの大切な仕事です。
自他古今東西を問わず、ありとあらゆる金属工芸品が当工房へと持ち込まれます。修理の工程・技法、納期、おおよその金額などを、こちらのページを活用し皆様にも公開してまいります。修理・修繕をお考えの皆様方へのご参考になれば幸いです。
「矢立金具(蝶番)」
青銅製の矢立。作者は不明。矢立をご存じない方も増えましたが、筆、墨を持ち運ぶための携帯用文房具です。長年使い込まれ、青銅の良い味がにじみ出ていました。銀製の蓋の蝶番(ちょうつがい)が、長年の使用でねじ切れています。
蝶は、二つの複雑な板と心棒によって構成されています。局所に強い力が加わるために、柔らかい銀で作ることは意外と困難です。さらに見た目のシンプルさとは裏腹に、曲面に蝶板をぴったりと這わせる成形加工も難しいところです。
金属疲労でねじ切れてしまった蝶は、もう再利用は出来ません。今回は心棒も切れていたので差し替え、蝶の片方を新調しました。
「アンティークポット」
過日持ち込まれたものは、アンティークのポット「クリストフル」製。刻印を見たところ、
30~40年ほど前に製作されたものの様です。お客様は、クリストフル社代理店へ直接
修理の依頼をされたそうですが「不可能」との返事。めぐりめぐって当店へ。
材質は亜鉛合金、すなわち量産されたモデルであることが判ります。また、銀メッキが施
されていました。ポットの取っ手の部分付け根が、完全に折れてしまっています。しかも
瞬間接着剤で着けようとした跡・・・・。亜鉛合金は低融点で溶け、またメッキ処理に影響が出るため、半田付・蝋付・溶接は物理的に無理のようです。破断部分に瞬間接着剤が残っているので、まず清掃から始めます。
(瞬間接着剤が着いていると、修理が出来ませんのでご注意下さい)。
面と面で密着するように断面を整え、位置決め・ずれ止めの「ひっかかり」を作ります。
最後はエポキシ系硬化樹脂にて接着。
金銀銅錫などの伝統的金工品に比べて、こういう大量生産向けの商品に用いられる近代素
材は根本修理は不可能です。元々永く使うことを考慮されていません。今回は、「5年く
らいもつ応急修理」とさせていただきました。
「ちろりの取っ手」
こちらはよくある故障の一つ、取っ手の捻じ曲げです。溶接され固定されている取っ手が、無理やりに捻じ曲げられることによる金属疲労の一種です。針金を同じ箇所何度も曲げていると折れてしまうのと全く同じ理屈です。
取っ手の前の台座は根本から外れ、後方部分も疲労し痩せてしまっています。こうなってしまうと新たな取っ手に付け替えるしか方法がありません。この故障は、お店様でのお使いに多いのが特徴です。
「花瓶の水漏れ」
青銅製の花瓶にも様々な工法が用いられますが、この花瓶は本体と底が別々に製作され半田付けしてあったようです。地震によって高所から落ちた衝撃で、底部の半田に歪みが生じ水漏れが起きていました。
一旦、底部分を外して半田を綺麗に取り去ります。酸化した皮膜や汚れ、水垢などが付いていると充填に不良が出ます。綺麗な金属素地を作り出し、新たに半田付けを施しました。修理加工の痕は目立たぬよう、緑青をつけて修理痕を隠します。