Prix Villa Kujoyama, Institut français du Japon Kansaï 2015 受賞者 加藤貢介さん・ヴィラ九条山短期滞在研究レポート

2016.01.26  いまからまめさら いまからまめさら2015 コラム 加藤貢介 展覧会

2015年7月17日~7月24日に開催した、公募展「いまからまめさら 2015」 において、ヴィラ九条山様とアンスティチュ・フランセ関西様との合同賞「 Prix Villa Kujoyama, Institut français du Japon Kansaï 2015 」を受賞された加藤 貢介さん。その副賞として、ニュイ・ブランシュ KYOTO 2015のヴィラ九条山会場での受賞作品「鉄製豆皿Ⅱ」の展示、そして昨年12月に、ヴィラ九条山にレジデントとして短期滞在し、ヴィラ九条山に滞在している様々なジャンルのアーティストと交流しながらテーマを自身で決め研究し発表する機会を得られました。
今日は、この機会を得て感じられた加藤貢介さんのレポートを発表いたします。

(nakano)

 

受賞からニュイ・ブランシュ、滞在制作を終えて  加藤 貢介

2015年7月17日から24日まで、清課堂ギャラリーでおこなわれていた「いまからまめさら2015〜小さな金属の世界〜」にて「アンスティチュ・ フランセ関西/ヴィラ九条山2015(Prix Villa Kujoyama, Institut français du Japon Kansaï 2015)賞」をいただきました。この受賞を機に、同年10月3日、「ニュイ・ブランシュKYOTO 2015」への参加と、12月1日から14日までの滞在制作の機会を設けていただきました。今回、12月の滞在制作を終え、ニュイ・ブランシュの展示から滞在制作について、その場で感じ、考え、得たことについて報告いたします。

10月3日、ニュイ・ブランシュでは、同時期にヴィラ九条山へレジデントとして滞在中だったデザイナー、フランソワ・アザンブール(Francois Azambourg)氏とのコラボレーションが決まりました。展示の内容は、「いまからまめさら」で受賞した作品を、フランソワさんに展示構成をして頂くというものです。 展示までの短い期間の中で、一度だけフランソワさんに会い、打ち合わせをする機会を設けていただきました。 その時のフランソワさんの提案は、鉄の作品に水色や黄色、ピンクといったポップな着色が施された木材を組み合わせてはどうだろう、という驚くべきものでした。これまで金属しか扱うことのなかった自分にとっては、展示にカラフルな色を組み合わせることは考えもしない発想でした。 どのような展示になるのかを楽しみに当日会場へと赴くと、彼は僕のモノトーンで重厚な鉄の作品を、豊かな色彩と軽やかな素材使いで、とても優しい空間の中へと落としこんでくれました。わざわざ木材に写しかえてくれたという手書きのキャプションからも、フランソワさんの人柄や作品の展示に対する姿勢を感じました。また、このときたまたま偶然が重なり、世界的有名ブランド「エルメス(HERMES)」のコレクションライン「プティ・アッシュ(petit h)」のスリートップの偉大な方々、またエルメスジャポンの代表取締役社長様とお話ができたことは、今も尚、とても貴重な経験の一つです。しかし、そのような貴重な経験も、これから先は自分の力で、なるべく日常の近い位置に持ってこなければならないと感じたことも事実です。

加藤貢介 ニュイ・ブランシュ KYOTO 2015/ヴィラ九条山展示

加藤貢介・鉄製豆皿Ⅱ/Nuit Blanche Kyoto 2015/ヴィラ九条山

ニュイ・ブランシュから2ヶ月がすぎた12月1日、約2週間の滞在制作がはじまりました。京都九条山にある「ヴィラ九条山」は、特別な制作のための施設があるわけではなく、どちらかと言えば生活をするための最低限の物があるだけの、いわばリサーチをするための空間でした。 僕の本来の仕事である鉄の造形は、大きな機械や特別な道具がなければ制作をすることができません。そのため、滞在制作が決まってしばらく、与えられた二週間をどのように使うか悩みました。しかし、どうせなにもないのなら、とヴィラでの二週間は普段の仕事からは少しはなれ、そこで新しい可能性を探すことと、今の表現を確実にプラスにする要素を探す時間にあてることにしました。

ヴィラに入り、最初の3日間は京都の市内を自転車でまわり、あらゆる素材に触れてみました。その中で興味をひかれたのが、金属箔とその箔張りのプロセスでした。普段作品に用いる「鉄」という素材は、その性質上とても銹びやすく、独特の匂いがあるため食用の器などには向きません。しかし、伝統的な箔張りのプロセスを踏まえると、接着剤として「漆」を用いるため強固な錆び止めのコーティングをすることができます。表面を漆で覆うことで、匂いも消しさることが可能です。さらに、金属箔は超極薄の素材であるため、普段扱う積層素材の模様を生かしつつ、表面に色彩的な変化を与えることもできます。滞在制作中は普段の仕事から離れると決めつつも、なんとなくそれに対して不安な気持ちもあったので、事前に皿状の作品と、6個の小さなキューブの作品を持ち込んでいました。市内でのサーチ期間を終えた後、ヴィラの部屋の中でキューブに様々な箔張り方法をためしました。箔を単色で貼ってみたり、異なる色彩の箔を重ね張りしてみたり、それを擦ってみたり、とにかく良い効果がでる見せ方を探しました。一週間がすぎたころに気づいたことは、金属箔という素材は平面・曲面・凹面・凸面を問わず、あらゆる形状に貼ることができるという「利点」でした。しかし、裏を返すとその利点にとらわれすぎで、母体の本質を損なう恐れがあるということにも気づきました。最終的に12月12日に行われた成果発表では、立方体の2面だけ母体の下地を見せ、残りの面を箔で覆う作品を発表しました。こうすることで、視覚的に鉄本来の重量感を残しつつ、表面的な効果が得られると感じたからです。

また、この成果発表の2日前、思いがけないお誘いの声がかかりました。それは同時期に滞在していたフランス人建築家、アンドリュー・トッド(Andrew Todd)氏と日本人建築家、萩野紀一郎(Kiichiro Hagino)氏による竹のプロジェクトとのコラボレーションをしてみないか、というものでした。フランソワさんとのコラボレーションもそうでしたが、全く考えもしない領域との組み合わせが実現するのは、ヴィラ九条山の魅力の一つです。当然、このお誘いには承諾させて頂き、当日の僕の作品は、約2m半ほどの大きさの、半球状の竹の空間の中で展示されました。普段、展示となると与えられたスペースにどのように作品を構成するかを必死になって考えますが、空間そのものをその場に作り、そこへインスタレーションすることも、ある場面では効果的だと感じました。ヴィラでの滞在を終えその時の制作を振り返ると、「金属箔」という素材は自分の造形に確かなプラス要素を与えてくれるということでした。しかし、単に素材に金属箔を貼るだけでは、普段目にするありきたりなものになってしまうため、使用する上で母体と金属箔のバランスの取り方が極めて重要であると認識しました。今回の滞在制作の内容をしっかりと完成形にし、近い将来、皆様にご覧頂けますように、さらなるブラッシュアップをして参りたいと思います。

加藤貢介 ヴィラ九条山短期滞在研究発表

加藤貢介 ヴィラ九条山短期滞在研究発表

加藤貢介 ヴィラ九条山短期滞在研究発表

最後に、ヴィラでのアーティスト達との交流で感じたことを少しだけ書きます。我々日本人のアーティストに現れがちな海外へのあこがれや日本人コンプレックスというのは、はっきりいって取るに足らない些細なことです。なぜなら、我々が海外を求めるのと同様に、彼、彼女らも日本を求めているからです。今、世界的に日本文化のブームが起こっていますが、それに便乗するだけではなく、もっともっと根本的な部分で日本人として誇りを持つべきだし、自分たちの文化に自信をもたなければならないと感じました。その自信を持つべき文化とは、歴史的な日本文化ではなく、自分たちが生きている、まさに今この時代のリアルな文化だと思います。 また、日本のアートシーンにある様々な領域の「壁」にはとらわれる必要はないと思います。ヴィラ九条山には、ファインアートのアーティスト以外に、音楽家やパフォーマー、デザイナー、建築家、さらには映画評論家なども滞在しています。しかし、彼らはそのような壁に捉われず、個々を尊重し合い、そこから得られるエネルギーや可能性を得るために純粋でした。その姿勢というのは、海外のアーティストだからリスペクトするのではなく、一人の作家としてリスペクトする必要があると感じました。 そして何よりも、彼らの行動力と作品を作るときのエネルギーの強さに驚きました。僕はどちらかといえば毎日決まった時間作業をこなし、少しずつ形を作っていくタイプです。そのため、生活の中のルーティンが崩れることは制作に大きく影響がでるため、あまりフットワークが軽い方ではありません。彼らの場合はそれとは逆で、後に制作を控えていても、ギリギリの瞬間まで興味ある方向にまっすぐ進み、爆発的な強い力で作品を作りあげるのです。しかし、それはどこからどこまでのラインを制作と捉るかで変わるのではないでしょうか。僕の場合は時間内手を動かすことが制作だとしたら、おそらく彼らにとっては興味あるその方向に進んでいる瞬間すらも、制作の一部なのだと思います。多様な領域のアーティストと過ごした2週間の中で、領域を超えて様々な側面をのぞき込むことができました。その中で共通して感じたことは、自分の分身とも言える作品に、どれだけ情熱とエネルギーを注ぎ込むことができるか、更にはその情熱とエネルギーを観る側に伝えるだけの造形力を、物作りは備える必要があるということです。 またいつか、世界のどこかで、胸を張って彼らに再会できるように、更なる飛躍を目指して今後の作家活動に励んで行きたいと思います。最後に、清課堂ギャラリーでの受賞をはじめニュイ・ブランシュ、滞在制作と様々なチャンスを与えて下さったヴィラ九条山のクリスチャン・メルリオ館長とスタッフの皆様、アンスティチュ・ フランセ関西のイザベル・オリヴィエ様、そして清課堂ギャラリーの山中源兵衛様とスタッフの皆様に、心よりお礼申し上げます。