曜変木目鉄(ようへんもくめがね)

2014.01.04  伝統を探る 茶の器

曜変木目鉄

国宝へのオマージュ/homage

「うつわの中に宇宙を見る」

2012年夏、ダマスカス鋼(こう)※が私のこころを一瞬にして奪います。それは公募展「いまからまめさら」に応募された作品のひとつ、広島県の大学院生・加藤貢介によって作られた豆皿でした。ダマスカスの最大の魅力である木目状や縞状の文様に加えて、鉄が持つ重厚感、深みのある黒い色合いをしっかり併せ持ち、手のひらにしっくりとおさまる大きさにぎゅっと魅力が詰め込まれた素晴らしい作品でした。(それまでに私がみてきたダマスカスは、趣味のナイフなど刃物の装飾技法でしかなく、さほど印象に残るものではありませんでした。)

この作品はまるで抽象絵画と向き合った時のように、見る人の心情によって印象、受け止め方が異なるように思います。同じ作品でも木目に見えるときもあれば、渦巻きや滴る滝壺または標高グラフの地図、爬虫類の皮革のようにも見えたりと、想像力を刺激され引き込まれてゆきます。

このダマスカスのもつ、偶発的に生まれるさまざまなこの細やかで美しい文様。いつかどこかで……私が抱く既視感の先にあったのが、曜変天目(ようへんてんもく)でした。12~13世紀頃に中国の名窯で作られ、全世界においてたった3つしか現存しない茶碗です。すべてが我が国の国宝に指定されています。曜変天目は漆黒の器の内側に、大小さまざまな斑点が星空のように散らばり、周囲は光の角度によって深みのある藍から鮮やかな青や緑へと妖しく変化し、まるで螺鈿細工のようにも見えます。虹のような光彩がまるで暈(かさ)のように輝くのです。
当時、中国が国を挙げて焼成した天目茶碗。曜変は何十万、何百万もの中から偶然に生まれたものだと言われています。ダマスカス鋼もまた、鉄を何万回とたたき、削り、焼き、練り込むという工程を踏んでこそ、初めてその姿を見せてくれます。

ダマスカス特有の細やかな積層と、そこから生まれる立体感溢れる文様との出会いから1年以上。広島にある加藤の製作現場に足しげく通い試作を何度も重ね、この天目の形状に行きつきました。「うつわの中に宇宙が見える」と評される曜変天目への敬意をこめて、金工の世界から「曜変木目鉄(ようへんもくめがね)」を発表いたします。

 

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 (Written by Yamanaka)

「曜変木目鉄(ようへんもくめがね)ver.2015」 清課堂七代山中源兵衛×加藤貢介 作

直径15cm~20cm、高さ5cm~8cm \ ※ SOLD OUT こちらの商品は完売いたしました。

 

「曜変木目鉄(ようへんもくめがね)ver.2017」 清課堂七代山中源兵衛×加藤貢介 作

直径15cm~20cm、高さ5cm~8cm \ ¥180,000 ( 税抜・excluding tax) 限定数 3

 

※ダマスカス鋼…木目状の文様を持つ鋼(はがね)。鉄を主成分にする合金で、鉄の持つ性能(強度、靭性、磁性、耐熱性、自己潤滑性など)が人工的に高められています。

 

加藤貢介
1988年神奈川県に生まれる。幼少期よりモノづくりに興味を持ち、高校のとき「鍛金」に触れたのがきっかけとなり金工の道へ。玉川大学在学中は主に伝統的な技法を学んだ。卒業制作において初めて「鉄」を扱い、その魅力に引き込まれ、広島市立大学大学院へ進学後も「鉄」と向き合う日々を送る。大学院を修了後も、このダマスカス模様の表現を作品に取り入れ、日々研究を重ねている。

曜変木目鉄の制作風景