修理・お直し

2010.05.21  リノベーション

昔から作り続けているもの・特別受注品製作のほかに、傷んだ金工品の修理も私どもの大切な仕事です。
自他古今東西を問わず、ありとあらゆる金属工芸品が当工房へと持ち込まれます。修理をお考えの皆様方へのご参考になれば幸いです。

修理のご依頼は「修理について」をご覧ください。

 

矢立金具(蝶番)

矢立

青銅製の矢立。作者は不明。矢立をご存じない方も増えましたが、筆、墨を持ち運ぶための携帯用文房具です。長年使い込まれ、青銅の良い味がにじみ出ていました。銀製の蓋の蝶番(ちょうつがい)が、長年の使用でねじ切れています。

蝶は、二つの複雑な板と心棒によって構成されています。局所に強い力が加わるために、柔らかい銀で作ることは意外と困難です。さらに見た目のシンプルさとは裏腹に、曲面に蝶板をぴったりと這わせる成形加工も難しいところです。

金属疲労でねじ切れてしまった蝶は、もう再利用は出来ません。今回は心棒も切れていたので差し替え、蝶の片方を新調しました。

 

アンティークポット

tea pot

過日持ち込まれたものは、アンティークのポット「クリストフル」製。刻印を見たところ、30~40年ほど前に製作されたものの様です。お客様は、クリストフル社代理店へ直接修理の依頼をされたそうですが「不可能」との返事。めぐりめぐって当店へ。

材質は亜鉛合金、すなわち量産されたモデルであることが判ります。また、銀メッキが施されていました。ポットの取っ手の部分付け根が、完全に折れてしまっています。しかも瞬間接着剤で着けようとした跡・・・・。亜鉛合金は低融点で溶け、またメッキ処理に影響が出るため、半田付・蝋付・溶接は物理的に無理のようです。破断部分に瞬間接着剤が残っているので、まず清掃から始めます。(瞬間接着剤が着いていると、修理が出来ませんのでご注意下さい)。面と面で密着するように断面を整え、位置決め・ずれ止めの「ひっかかり」を作ります。最後はエポキシ系硬化樹脂にて接着。

そもそも古いメッキの商品の根本修理は不可能です。元々永く使うことを考慮されていません。仮に手の込んだ彫金などがほどこされていたとしても、人件費が地金代にくらべてはるかに低かった時代に製造されたものです。素晴らしい装飾の品でも今回のように、接着剤を使った3~5年くらいもつ応急修理しか方法がありません。もしお客様がアンティークの品をお求めになるなら、メッキの品(主に銅合金で、白銅、ホワイトシルバー、コインシルバー、アンチモニーなどと呼ばれていることがあります。)は絶対に避けられたほうが良いでしょう。銀・シルバー製のものをお薦めします。

 

ちろりの取っ手

ちろりの取っ手

こちらはよくある故障の一つ、取っ手の捻じ曲げです。溶接され固定されている取っ手が、無理やりに捻じ曲げられることによる金属疲労の一種です。針金を同じ箇所何度も曲げていると折れてしまうのと全く同じ理屈です。

取っ手の前の台座は根本から外れ、後方部分も疲労し痩せてしまっています。こうなってしまうと新たな取っ手に付け替えるしか方法がありません。この故障は、お店様でのお使いに多いのが特徴です。

*近年、「曲げられる錫のうつわ」称した商品が出回るようになりました。

「曲げられる」のは物理的にやわらかく曲がりやすいというだけであって、もともと曲げてもよい素材ではありません。すずの別名を”シャリがね”とも呼びますが、曲げるとシャリと組織が崩壊して音が鳴ります。何度も曲げていると、金属疲労をおこしてひび割れしたりちぎれたりします。くれぐれも錫のうつわは曲げないように(鋳物製のものとくに)お願いします。

 

花瓶の水漏れ

花器底修理

青銅製の花瓶にも様々な工法が用いられますが、この花瓶は本体と底が別々に製作され半田付けしてあったようです。地震によって高所から落ちた衝撃で、底部の半田に歪みが生じ水漏れが起きていました。

一旦、底部分を外して半田を綺麗に取り去ります。酸化した皮膜や汚れ、水垢などが付いていると充填に不良が出ます。綺麗な金属素地を作り出し、新たに半田付けを施しました。修理加工の痕は目立たぬよう、緑青をつけて修理痕を隠します。

 

漆の焼き付け直し

漆の焼き付け直し

使い込むうちに光沢が落ち着き、味が深まる品でございますが、漆の焼き付け直し等をいたしまして新品のようにふたたび輝かせることも可能でございます。写真は漆を塗って焼き付けた「宣徳(せんとく)」という技法です。

 

籐の巻き直し

籐の巻き直し

やかん、急須、その他、熱いものを入れる器には、籐(トウ)を巻きます。取っ手部分の断熱を目的としています。新しい籐は乾湿を繰り返し、年月を経て徐々に固く締まってきます。通常の使用では10年以上は持ちますが、何かの拍子に外れたり切れたりすることがございます。当店では、この籐の巻き直しを承っています。
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