「編む」から始まる物語 アルメル・バロー

2010.08.14  Armel Barraud インタビュー 展覧会

アルメル・バローが日本に来てから、早3ヶ月が経ちました。彼女は、関西日仏交流会館ヴィラ九条山に滞在しながら清課堂ギャラリーに通い、着々と制作を続けています。細く柔らかな線が壁の上をつたいながらどんどん広がっていく様子は、さながら日々成長し続ける植物のように有機的です。

 

アルメルさん

●素材との出会い、レース編みとの出会い
幼いころから、父親の日曜大工を傍で見ていたというアルメル。工具箱の中のボビンに巻かれたワイヤーの存在を覚えていると言います。なぜワイヤーという素材を選び、使い続けているのか。そのはっきりとした理由はわからないそうですが、彼女が語ってくれた幼い日の記憶に、本能にも似た“予感”を垣間見ることができます。
アルメル道具 まち針とワイヤー

その後、彼女はアニメーションを学びながらも、グリッドやメッシュ素材を使った制作を行ってきました。そんな中、とあるレース職人との出会いが、大きな転機をもたらすこととなります。

「職人によるレース編みの技術を目の当たりにした時、その技に力強さを感じた。」

強くレース編みに魅かれた彼女は、すぐさまポルトガルのレース職人のもとに赴き、半年間の修行を経て伝統的なレース編みを習得しました。そして、その技法をアレンジし自身の制作に取り入れることで、新たな命を吹き込み生み出そうと試みました。

●物語の始点、その展開
アルメルがモチーフとするのは人、動物、植物から文様までと様々です。一本のワイヤーから、細やかな手作業でひとつひとつを豊かに形作っていきます。

「色々なものからインスピレーションを受けて、自分の中で像をつくり上げる。それを組み合わせてお話をつくっていく感じ。」

まるで少女のように純粋に、そして夢中でイメージの世界を表出するアルメルは、作品としての完成はもちろんのことながら、その過程を楽しんでいるようにも見えます。
彼女が編み成すもの。それはモチーフそのものであると同時に、それらを内包した物語、ひいては空間そのものでもあるのです。繊細に編み紡がれ壁一面に広がるは、まさに“アルメル・バローの世界”です。
アルメル作品写真

さらに、そうして生み出された作品たちは、見る者を巻き込みさらに広がり続けます。

「見る人が想像してくれる余地、発見や驚きのある作品をつくりたい」

彼女は、自らのイメージの具現としての作品に、それを見た人の眼差しが重なり、交わり、変化していくのが楽しいと言います。出来上がったその時点で完結するのではなく、見る者の中でまた新たに始まる。そんな、どこまでも連鎖的に続いていく物語性こそが彼女の持ち味です。
イマジネーションの世界に終わりがないように、彼女の作品にもまた、終わりはありません。

●アルメル×京都
遠くフランスからやって来たアルメル・バローという一人のアーティストが、数ヶ月に渡る滞在の中で「その時、その場所でしかできない作品づくり」をすること。そして、その過程も含めて皆様にご紹介していくことが本プロジェクトの目的です。

前回の展覧会に引き続き、今回も清課堂にとっての新たな挑戦だと言えます。私たちがアーティスト、ひいては“美”が生み出される現場に対してどのように関わり得るのかという―。
アルメルはここ京都で様々な人やものと出会い、その中で何を租借し、どんな風に自身の作品にアウトプット(反映)していくのでしょう。柔軟に、また自由に変化し続ける彼女なだけに、今後の展開が非常に楽しみです。

近況はこの「店主の手記」のほか、ツイッターでもお知らせいたします。
Twitter:清課堂ギャラリーアカウント



ワークショップ
展覧会に先立ちまして、ワイヤーアート、そしてアルメル自身と触れ合っていただくことを目的としたワークショップを開催します。

2010年8月21日(土)第一部 13:30~15:00/第二部 16:00~17:30
募集人数:各回7名  参加費:2,000円
会場:清課堂ギャラリー内、和室
内容:アルメルとともに、ワイヤーアートの小作品を制作
申込方法:お電話にて、075-231-3661(清課堂)までお問合せください。


展覧会
「編む」から広がる物語 アルメル・バロー
期間:2010年9月11日(土)~2010年9月25日(土) ※12日(日)のみ休廊
時間:10:00~19:00
会場:清課堂ギャラリー