Armel Barraud (アルメル・バロー)

2010.06.29  Armel Barraud 展覧会

アルメル・バローとの出会いは、今から一年半も前のこと。パリで開かれたメゾン・エ・オブジェの会場でのことでした。Ateliers d’Art de Franceが主催する「Talents」ブースにて沢山のアーティストの作品が展示されているなか、繊細で柔らかい金属の作品と出会いました。

 

アルメル・バロー 製作風景

すぐさま通訳を連れて制作者とコンタクトをとり、その場で京都への招へいの意思をつたえ、私が帰国後も連絡をとりあえるよう準備を取り掛かりました。偶然の素敵な出会いとはいえ、あまりに突然のことですからご本人も驚かれたことと思います。旅費のこと、滞在費のことも詳しく考えないまま衝動的にお誘いしました。そして、彼女が公的な援助も受けられるようにと、帰国後すぐにフランス政府宛に推薦状も書きました。フランス政府には、日本、とくに京都へアーティストを送り込み、研究させるためのプログラムがあることは事前に知っていました。。。

しかし残念ながら、当年度の申し込み締切日が過ぎていたとのこと。その後彼女との連絡も途絶え、当方も多忙な毎日に追われていて、展覧会開催のことはすっかり後回しになっていました。


およそ一年半も経って、突然彼女からメールがありました。政府の公的援助を得ることが出来、数日後にフランスを発って京都に行くことが決まったのだと。支援審査の締め切りも過ぎ定員も既にいっぱいだったにもかかわらず、滑り込みイレギュラーで審査に通ったのだそうです。よって通常よりかなり短い期間(通常は半年ほど滞在)ではありますが、アパート(アーティストレジデンス)の確保、資金面での援助も得られたのだとか。

関西日仏交流会館 ヴィラ九条山レジデント
アルメルの手

そして、とんとん拍子で清課堂ギャラリーでの日本発となる彼女の個展が決まりました。いまのところ仮ではありますが、本年2010年9月11日(土)から25日(土)のおよそ2週間を予定しています。
ボビンとワイヤー あみかけの作品

今回の目玉は素敵な作品もさることながら、この2ヶ月に渡ってギャラリー現地で空間に合わせて制作を行っていただくことです。古典的なレース編み技法を応用した金属作品(インスタレーション)が進行してゆくさま、アルメルが制作に取り組む姿を、逐一ご報告してまいります。
(写真は、編む際に用いる道具”ボビン”と様々な太さの金属製ワイヤー)

近況はこの「店主の手記」のほか、ツイッターでもお知らせいたします。
Twitter:清課堂ギャラリーアカウント
アルメルと作品

7月1日より9月10日まで、店舗奥の蔵をつかって制作を続けます。


Armel Barraud(アルメル・バロー)
関西日仏交流会館 ヴィラ九条山レジデント
(2010年5月から2010年8月末までヴィラに滞在)

アルメル・バローは、パリの応用芸術学院と装飾美術学院で学び、アニメーションフィルムを専攻。グリッドやメッシュの制作を基軸として造形表現の探究を行ってきた。

ポルトガルやフィンランドの職人のもとにレース編み(ボビンレース)の技術を習いに行ったのは、こうした技術が自分の仕事に役立つと確信したからにほかならない。女性のレース編み職人たちとの交流から多くを学んで帰国したアルメル・バローは、再生しなければ消滅してしまう恐れのある無形の世界遺産とも言える手先の動きを彼女たちから受け継いだと自覚している。

アーティストとしての彼女はボビンレースの新たな応用法を模索してきた。シリーズ作品『mur mur/ミュール・ミュール』はこうした努力の成果となっている。
それは銀その他の金属でできた針金をレース状に編んで描かれたデッサンで、個人の家や公共の場に飾られるオーダーメード作品となっている。
個々の作品は、その将来の持ち主、展示の場となる家屋、そして特有の動きを備えた編み方の間で交わされる対話の産物となっている。
こうした《糸状》のインスタレーションにより、プライベートな空間を自分のものとすることができ、壁は生きているかのように、自然光や人工照明につれて変化を見せる。光は針金の影を映し出し、最初に受けた印象を徐々に変えていく。そこに物語が生まれ、見る人の眼差しによって展開を遂げていく。(関西日仏交流会館公式ページより引用)

Biographie :

Armel Barraud a suivi ses études aux Arts Appliqués et à l’Ecole des Arts Décoratifs de Paris, où elle s’est spécialisée dans la section de film d’animation, en axant sa recherche plastique sur la réalisation de trames et maillages. Elle est allée apprendre auprès d’artisans Portugais et Finlandais la technique de la dentelle aux fuseaux, sûre que cette technique lui servirait dans son travail. Elle en revint enrichie de l’échange avec des dentellières, consciente qu’elles lui transmettaient un geste du patrimoine éphémère mondial qui s’apprête à disparaître si on ne le rénove pas. En tant qu’artiste, elle a recherché une nouvelle application de la dentelle aux fuseaux. Les pièces de la série “mur mur” sont le résultat de cette recherche. Il s’agit de dessins en dentelle de fil d’argent, de métal et d’autres matériaux, réalisés sur mesure pour être exposés chez des particuliers ou dans des lieux publics. Chaque dentelle est le résultat d’un dialogue entre son futur propriétaire, la maison et les tissages qui imposent leur propre mouvement. Cette installation « filaire » permet de s’approprier son espace privé, le mur semble vivre, et évolue avec la lumière naturelle ou artificielle qui projette les ombres des fils et transforme peu à peu ce que l’on avait perçu au premier abord ; une histoire se raconte, et évolue selon chaque regard porté.


展覧会に日程が正式決定しました。
2010年9月11日(土)から25日(土) *日曜休廊
9月11日(土)18;00より、オープニングパーティを行います。